~卒業文集より~

★~志成館卒業生による卒業文集をご紹介します~★
『夢の在り処』  H19卒 男子生徒
 初めて志成館で授業を受けたのはあの日から早三年の月日が流れ、来たる二月二十九日、僕は新たなる一歩を踏み出すこととなりました。しかし、この学舎で級友たちや、先生方と共有した時間は、ほんの僅かだったでしょう。当たり前の日常に退屈していた僕は、二年生へと進級して間もない頃、学校へ通うことを辞め、そのことで空いた心の隙間を探す為に、彷徨い続ける日々を送っていました。そもそも、世間では、「学校で勉強するのが学生の仕事」とされるのが常識と言えます。だからこそ、学生の仕事を辞め、現在の自分とは違う展望台に立つことを望んだのです。結局、そこから見えた景色は、一筋の光さえさすことのない暗闇に包まれた世界でした。
 そんな風景の中を旅するうちに、僕の心の隙間は増え、いつか夢と呼んでいた何かが、その隙間から流れだしていくのに気づかない程、僕の目は暗闇の世界に馴染んでいました。ある日の面談の後、中熊先生とお話しする機会がありました。そこで先生が僕を心配してくれていることや、クラスの皆のことを話してくださったのを、今でも僕は覚えています。その時、僕は目の前に一筋の光が射し込んで来たのを、僕は覚えています。
 あの時の光は、先生の言葉であり、皆との思い出であり、それは今日まで僕を導いてくれた「夢の思い出」でした。暗闇の世界の中で、全てから目を逸らし、独り善がりに陥っていた僕の隙間を埋めてくれたものは、あの日の僕が嫌い、今の僕が憧れる「日常」の中にあったのです。僕の夢とは、当たり前のように学校に行き、授業を受け、友達と何気ないおしゃべりをして、笑ったり、泣いたり、ケンカして仲直りしたり、そんな「日常」を送ることだったのです。失って、思い出してから気づきました。それが、どれだけ大切かということを。それ故に、僕は決して忘れません。僕にも夢のような時間があったことを。
 最後に、志成館で先生方や皆と過ごしたのは、本当に短い間だったと思います。だけども、その思い出は、僕の中で一番星のように輝き、これか行く道を照らしてくれることでしょう。そして、いつの日か、志成館で学んだことが誇れる自分になりたいです。三年間、本当にありがとうございました。僕は、「夢の思い出」を胸に、新たなる旅路への一歩を踏み出します。